吃音のレベル:吃音にはレベルがある! 発話の特徴や症状について

会話の際に、「わわわわたし」とはじめの音を何度か繰り返したり、「・・・・っわ!たしは」と、ことばを詰まらせたりしている方に出会ったことはありませんか?『吃音(きつおん)』という、ことばをスラスラ話すことに苦手さを抱える発話障害がそれにあたります。ただ、吃音にも程度(レベル)があり、症状が顕著な方もいれば、ほとんど目立たない方もいます。そこで、吃音の概要や吃音のレベル、レベルごとの発話の特徴などをご紹介します。吃音者ができること、反対に周囲の人々が吃音者に対してできることをレベルごとに解説していきます。

目次

吃音ってなに?

『吃音(きつおん)』とは、連発(れんぱつ:音の繰り返し)・伸発(しんぱつ:音の引き伸ばし)・難発(なんぱつ:阻止・ブロック)の3つの発話特徴を示す、非流暢性の発話障害のことをいいます。会話をしたり、話を組み立てたりする力はありますが、ことばを発する際に症状が現れ、滑らかに話しをすることに困難さを示します。

タイプ 発話の様子 現れ方 話し方
連発 音・語の一部を繰り返す 単語・文の頭 ぼぼぼぼぼうし
伸発 音・語の一部を引き伸ばす 単語・文の頭 ぼーーーーぅし
難発 最初のことばが詰まって出ない 文の様々なところ ・・・・・・っぼ!うし

連発や伸発は、周囲から見ても“吃っている”と感じやすいです。その一方で、難発に関しては、程度にもよるものの“ことばが出てくるのが遅い”“返事がワンテンポ遅れる”という印象を受けやすく、吃っていることに気づかれにくいこともあります。しかし、実際は連発や伸発よりも、難発の方が身体的・精神的な負担が大きいのです。

吃音の人はどれくらいいるの?

身近に吃音者(吃音を患っている人のこと)がいるという方もいれば、吃音者に出会ったことがないという方も多いでしょう。吃音は、幼児期に約5%、つまり100人に約5人程度の割合で発症します。主に、2~4歳頃に発症し、男女比は4:1と男児(男性)に多いことがわかっています。発症後4年の間に約74%の人は自然回復の道をたどりますが、残りの約26%の人は自然回復が難しく、吃音との共存が必要となります。

吃音の原因は?【愛情不足って本当?】

吃音の原因は、まだ確かなことがわかっていません。多くの研究者が様々な理論を展開してきましたが、現在もまだ研究中です。
ただ、吃音の原因は体質的なものが70%、体質以外の原因が30%であるとされ、決して育て方や愛情不足が原因ではないことはわかっています。そのほかにも、利き手を矯正したこと、心が弱いこと、吃音であることに気づいたことなど、発症の原因には諸説ありますが、これらは根拠のない“誤解”なのです。

原因がわかっている吃音もある

発達途中に生じる吃音(発達性吃音)は、未だ確かな原因がわかっていませんが、発症の原因が明らかな吃音も存在します。

タイプ 発症時期 原因
獲得性吃音 心因性吃音 ストレスやトラウマ体験後 精神的ストレスやトラウマ経験など
神経原性吃音 脳・神経系の病気の発症後 脳卒中や頭部外傷、パーキンソン病など

獲得性吃音は、発達性吃音とは異なる特徴を持っており、随伴症状や吃音に対する不安や恐れを抱くことが少なかったり、難発が生じにくかったりします。訓練効果がほぼないことも特徴の一つです。

随伴症状とは?

吃音の症状が進み、難発が現れ始めると、“話したいのにことばが出ない”という苦しい状況から何とか逃れたいという気持ちから、『随伴症状』が出現します。ことばに詰まった際、「手を振ったらことばが出た」「身体を反らせたら一音目が出せた」という経験から、身体の動きが習慣化されていきます。しかし、次第に身体を動かしてもことばが出るということは減っていき、効果をなさなくなります。随伴症状の例は、以下の通りです。

現れる部位 現れ方
発音・呼吸に必要な器官 口を開ける・唇や顎を動かす・舌を出し入れする・唇を舐める・舌打ち・溜息・口をもごもごする
顔面 まばたき・目をぎゅっと閉じる・目を見開く・こわばった表情をする(渋面)・鼻を膨らませる
首・頭 首を横にかたむける・頭を前後に動かす
胴体 前のめりになる・のけ反る・腰を浮かす・身体が固まる(硬直)
手・足 手足を振る・足で床を蹴る・手をギュッと握る・身体や顔を叩く・近くの物を叩く

吃音があるとどんなことが大変?

吃音の症状が出やすい場面や音(母音が出しにくい、/カ/の音が苦手など)は人それぞれです。吃音者が、上手くことばが出ずに困ってしまう場面も様々です。

人前で発表するとき

学校生活:音読や発表、指名されて答える場面など
社会生活:朝礼や会議、プレゼンテーションなど
必ずしも緊張すると吃音症状が出るわけではありませんが、過度に緊張したり、考えをまとめながら話したりする必要がある場面では、症状が出やすい傾向にあります。言いたいことはわかっているのに、ことばに詰まってしまうことで、「自分の言いたいことはちゃんと伝わったのか…」と不安に陥ってしまいます。

相手の顔が見えないシーン

学校生活:電話や放送など
社会生活:電話対応や画面共有された資料を目の前にして話すオンライン会議など
相手の表情が見えず、声だけで気持ちを伝える場面において、ことばに詰まってしまうことがあります。“ことばでしっかりと伝えなくては”という話すことへのプレッシャーを感じ、精神的な負担も多くなります。

言い換えが聞かないことばに直面したとき

学校生活:友だちや先生の名前、教科名を言うときなど
社会生活:上司や先輩、同僚の名前、会社名、商品名を言うときなど
吃音との付き合いが長くなるにつれて、自身の苦手な音がわかってきます。言い換えの利くことば(犬の“い”が吃りやすいので「わんちゃん」という)への置き換えが利かないことばに直面すると、「間違ってはいけない」「スラスラ言わなくては」という気持ちから、よりことばに詰まってしまうことがあります。

このほかにも…

◆飲食店などでの注文
◆日常会話や自分の気持ちを伝える場面
◆複数人で話す場面

など、様々な場面で困難さを感じています。

吃音とは異なるものの、『トゥレット症候群』というチック症では、ことばが滑らかに出てこないほか、公共の場や静かにしなければいけない場面で、身体が動いてしまったり、言ってはいけないことばが意図せずに発してしまったりするという困難さもあります。

吃音の進展段階

吃音は、症状が進展したり、軽減したりを繰り返すことも特徴の一つです。そこで、症状の進展の目安を示す段階表が設けられています。吃音の始まりを第1層とし、4層へ進むにつれて症状が重くなっていきます。

吃音症状 随伴症状・その他症状 吃音への自覚や心情
第1層 ・連発
・伸発
・症状は吃音症状のみ ・吃音の自覚や恐れはない
・どのような場面でもペラペラと自由に話す
第2層 ・連発や伸発
・難発が出現
・随伴症状が出現する ・吃音の自覚が出てくる
・話すことが困難な際、「話せない!」と訴えることも
・場面を問わず話す
第3層 ・難発
・連発や伸発
・解除反応・助走・延期が加わる ・吃るかもしれない…と不安を感じる
・吃音を隠そうとする
・吃音を恥ずかしいと思うが恐怖はまだない
第4層 ・難発が主
・一見吃っていないように感じる
・連発や伸発は減少
・回避が加わる ・吃音へ恐怖を感じるようになる
・吃音の悩みを一人で抱え込んでしまう

【症状別に見る発話特徴】~段階による発話や気持ちの変化~

吃音の症状には波があり、変化を繰り返します。吃音の症状が、第1層~第4層へと進むにつれて、発話の様子や気持ちにも変化が現れます。
発話サンプルを使って、どのような発話特徴を呈するのかをご紹介します。

<発話サンプル>
今日は、お買い物に行って、ジュースとおかしを買いました。

第1層の場合

連発や伸発が出現し、大体の人がこの第1層での症状が吃音であるとイメージします。自身が吃音であることはもちろん、話しづらさの自覚はありません。中には、“なんとなく”話しづらさを感じている子どもがいる場合もありますが、本人からの発信はまだありません。主に、文の頭に症状が現れ、吃ったり吃らなかったりと変動が大きいのが特徴です。特に、興奮時に症状が顕著に表れます。

<第1層で観察される発話>
キキキきょうは、オーーーーかいものにいって、ジュースとオカオカおかしをかいました。

⇒会話で連発や伸発が現れるものの、気にせずどんどん話します。

第2層の場合

第1層のように、連発・伸発も主症状としてありますが、それに難発が加わります。難発が加わることにより、なんとかその苦しい状況を逃れようと、随伴症状が出現するのが第2層の特徴です。周囲からの印象も変化し、「なんだか苦しそうだけど、大丈夫かな?」と心配度も増します。

<第2層で観察される発話>
・・・・ッ!(随)きょうは、オーーーーかいものにいって、・・・・ジ!(随)ジュースとオオオおかしをかいました。

※(随)は随伴症状

⇒第2層からは、“話そうとしているのにことばが出ない”という苦しい症状が加わり、「どうしてうまく話せないんだろう…」「うまくことばが出ない」と吃音(話しづらさ)を自覚します。特に興奮時に症状が顕著に表れ、あまりに長くことばが出ない状況が続くと、子から親へ話せないことを打ち明けてきたり、助けを求めたりすることもあります。

第3層の場合

第3層になると、自身が吃りやすい場面や音、ことばがわかるようになってきます。3つの発話症状に加え、吃りそうなときに力を入れて発声する『解除反応』、「あのー」「えー」などの『助走』、遠回しな表現を用いたり考えているふりをしたりする『延期』といった吃音を隠すための工夫が現れます。

<第3層で観察される発話>
えーっと・・・(助)きょうは、・・・ショッピングにいって、・・・のみものえっと…なんだったかな・・・(延)オ!(随)かしをかいました。

※(随)は随伴症状、(延)は延期、(助)は助走

⇒第3層では、症状の変動は少なくなり、慢性的に症状が現れるようになります。吃音の症状が続くと、苛立ったり、嫌悪感を抱いたりするようにもなります。

第4層の場合

第4層になると、難発が主となり目立つ症状が減ってきたり、話すことを避けたりする(回避)ことにより、一見吃っていないように感じられますが、本人の精神的・身体的な負担はピークに達しています。吃音を恐れ、“吃りたくない”という気持ちから、話すこと自体を極端に避けるため、周りからは非社交的な人と誤解されることもしばしばあります。

<第4層で観察される発話>
えーっと・・・(助)きょうは、・・・オカイモノにいって、・・・もう忘れました。(回)

※(助)は助走、(回)は回避

⇒吃音の症状は慢性化し、「あ、吃る、無理だ」という予期不安も大きくなります。吃音に対する恐れも大きくなり、本人にとって深刻な問題へと発展します。

吃音のレベル【進展段階との違い】

吃音の進展段階を示す目安があるように、吃音のレベル(重症度)を示す目安も存在します。吃音の症状を、0~5の6段階で評価し、症状がどの程度のレベルにあるのか位置づけします。『症状がどれくらい出現しているか』『どれくらいの時間症状が出現しているか』『緊張性はあるか』『随伴症状はどうか』『吃音の回避や工夫は見られているか』などの項目を評価します。

位置づけのタイプ 目的
吃音症状の進展 吃音の症状がどれだけ進展しているのか把握する
吃音のレベル(重症度) 症状がどれくらいの頻度で出現しているのか評価する

 

レベル別に見る発話の特徴

吃音のレベルを示す0~5段階のうち、成人期におけるレベル1・レベル3・レベル5にフォーカスした発話特徴をご紹介します。レベル0は、吃音症状が全くない状態を指します。本来は、様々な評価を経てレベル分けしますが、今回は『単語を読む』『自身についての話しをする』『自由に会話をする』場面の様子をレベル別にご紹介します。

レベル1の場合【緊張が見られないケース】

単語 ①蚊 ②帆 ③巣 ④かさ ⑤いす ⑥あな ⑦携帯 ⑧紫 ⑨本棚 ⑩さくらんぼ ⑪文房具 ⑫病院 ⑬気象衛星 ⑭立体駐車場 ⑮スマートフォン ⑯ドライバー ⑰動物園 ⑱トラック ⑲アクアマリン ⑳タオル
自身の話 キキキ昨日、パズルを えーやったん です。
今の パズルは すごい ですね。
透明 だったり、 立体に なったり するん ですよね。
かなり 時間が かかって しまって、300 ピース 完成 させるのに、気付いたら 夕方に なって いたんです。
もう、疲れて 20時には 寝て しまいました。
次の 日 目覚ましが なくても、5時に パッと 目が 覚めて しまいましたよ。
自由会話 ST:今年の夏のご予定はありますか?
Kさん:ジジジ実家に 帰って のんびり したいですね。うみにも 入りたいし、釣りにも 行きたいですね。
ST:海、良いですね。夏は何が釣れるんですか?
Kさん:
(唇をなめるようなしぐさ)ススススズキとか、アジも 釣れますね。
ST:わぁ、すごいですね。どうしても、魚が触れなくて…。
Kさん:手袋を したり、魚を つかんだり する 道具も 売ってますよ。あとは、なーーーーれですね。
ST:Kさんは、慣れてらっしゃるんですね。釣りは始めてどれくらいですか?
Kさん:もう 始めて 20年 くらい ですかね。子どもの 頃から やってますんで。
ST:20年!そんなに長い間楽しめる趣味があるなんて、素敵ですね。ほかにも趣味はありますか?
Kさん:あとは やっぱり パズル ですかね。作って 姪っ子に あげるのが ブームです。さっき 話した パズルも 姪っ子に プレゼント しました。

吃音の中核症状 随伴症状 吃音における工夫

単語では、ほぼ吃音症状は見られません。自身の話をするとき、連発・伸発が数回出現しています。よく観察しないとわからないような随伴症状、助走も確認できます。会話が不自然であると感じることもありません。
【症状の頻度・出現時間・随伴症状・回避や工夫】に関してはレベル1、【緊張性】に関してはレベル0(見られない)という位置づけとなります。

レベル3の場合【緊張が見られるケース】

単語 クァ!蚊 ②帆 ③巣 ④かさ ⑤いす ⑥あな ⑦携帯 ⑧紫 ⑨本棚⑩さくらんぼ ⑪文房具 ⑫病院 ⑬気象衛星 ⑭立体駐車場 ⑮・・・!スマートフォン ⑯ドライバー ⑰動物園 ⑱トラック ⑲アクアマリン ⑳タオル
自身の話 ・・・キ!昨日、パズルを やったん です。
今の パズルは ・・・スごい ですね。
ト!透明 だったり、 立体に なったり するん ですよね。
かなり 時間が かかって しまって、 ・・・スァ!300 ピース 完成 させるのに、気付いたら ユユ夕方に なって いたんです。
もう、疲れて 20時には ねーーーて しまいました。
次の 日 目覚ましが なくても、5時に ハハハパッと 目が 覚めて しまいました
自由会話 ST:今年の夏のご予定はありますか?
Kさん:ジ・・・・実家に 帰って のんびり したいですね。えっと・・・うみにも 入りたいし、・・・!つりにも 行きたいですね。
ST:海、良いですね。夏は何が釣れるんですか?
Kさん:ススススズキとか、アジも 釣れますね。
ST:わぁ、すごいですね。どうしても、魚が触れなくて…。
Kさん:・・・テ!テ!ぶくろを したり、魚を つかんだり する 道具も 売ってますよ。あとは、なーーーーれですね。
ST:Kさんは、慣れてらっしゃるんですね。釣りは始めてどれくらいですか?
Kさん:もう! ハハハ始めて 20年 くらい ですかね。・・・コ!どもの 頃から やってますんで。
ST:20年!そんなに長い間楽しめる趣味があるなんて、素敵ですね。ほかにも趣味はありますか?
Kさん:あーーーとは やっぱり パズル ですかね。作って 姪っ子に あげるのが ブ!ームです。さっき はーーーなした パズルも 姪っ子に プレゼント しました。

吃音の中核症状 随伴症状 吃音における工夫

単語では、2度ほど吃音症状が見られます。自身の話をするとき、自由会話の場面では、連発・伸発・難発が1文に1回程度の頻度で出現しています。吃音症状に伴い、随伴症状も頻回に出現し、症状も1秒以上は持続しています。会話はわりと流暢ですが、やや不自然さを感じます。
【症状の頻度・出現時間・随伴症状・回避や工夫】に関してはレベル3、【緊張性】に関してはレベル2という位置づけとなります。

レベル5の場合

単語 ・・・ク蚊 ②フ・・・帆 ③巣 ④・・・クかさ ⑤・!いす ⑥ハ・・・あな ⑦・・クッ!携帯 ⑧紫 ⑨・・・・ホッ!本棚 ⑩・・・・スァ!さくらんぼ ⑪文房具 ⑫病院 ⑬・・・キ!気象衛星 ⑭立体駐車場 ⑮・・・!スマートフォン ⑯・・ド!ドライバー ⑰ド!動物園 ⑱トラック ⑲・・・ハァ!アクアマリン ⑳ターータオル
自身の話 ・・・キ!昨日、パパパパズルを ィーーやったん です。
い!今の プァ!パズルは ・・・スごい ですね。
・・・・・・ト!透明 だったり、 リーーィ立体に ン!なったり えーっえとえとえと・・・スーするん ですよね。
・・・クァーかなり 時間が カッ・・・・かかって しまって、・・・スァ!300 ピース カ・・・・完成 ス!させるのに、ック・・・キ気付いたら いーーつだったかな)夕方に ン!なって いたんです。
ン!もう、疲れて ハーー20時には ねーーー・・・シ!しまいました。
・・・ツ次の 日 目覚ましが ハーー・・・なくても、えーっと・・・5時に ハハハパッと ンー目が スァ!・・・覚めて シシシしまいましたよ。
自由会話 ST:今年の夏のご予定はありますか?
Kさん:ジ・・・・実家に クァ・・・帰って ん!の!んびり シ!したいですね。えっと・・・ウ!うみにも ハーー入りたいし、・・・!つりにも イ!行きたいですね。
ST:海、良いですね。夏は何が釣れるんですか?
Kさん:ススススズキとか、・・・ア!ジも ク!・・・ツれますね。
ST:わぁ、すごいですね。どうしても、魚が触れなくて…。
Kさん:・・・テ!て!ぶくろを シシしたり、スァ・・・サかなを ツツつかんだり する ど!道具も ウウウ売ってますよ。ア!あとは、なーーーーれですね。
ST:Kさんは、慣れてらっしゃるんですね。釣りは始めてどれくらいですか?
Kさん:もう! ハハハ始めて えっと・・・ニ・・・20年 ク!くらい ですかね。・・・コ!どもの ・・・こ!ろから ィ!やってますんで。
ST:20年!そんなに長い間楽しめる趣味があるなんて、素敵ですね。ほかにも趣味はありますか?
Kさん:(本当は趣味があるが)も!もう、ないです。

吃音の中核症状 随伴症状 吃音における工夫

単語や文に関係なく、ほぼ全ての文節で吃音症状が現れているのがわかります。このレベルになると、話し手の身体的・精神的な負担も大きく、話すこと自体をあきらめてしまうことも増えてきます。カ行音は苦手なのか、単語・文の両方でほぼ症状が現れています。
【症状の頻度・出現時間・随伴症状・回避や工夫・緊張性】の全ての項目においてレベル5の位置づけとなります。

吃音には波がある

吃音は、進展を繰り返すことが特徴としてあるため、ずっと同じレベルでとどまるということは少ないです。レベル2と3を行き来したり、レベル4になっては3に戻ったりと、症状は変動します。症状がつらい(重い)時期が永遠と続くのではなく、良くなったり悪くなったりを繰り返します。

吃音のレベルによる対応の違い

吃音には進展段階やレベルがあることがわかりました。レベルによって、吃音症状の頻度やその他の症状にかなりの差があることもわかります。吃音のレベルによって、吃音者ができること、周囲の人々ができることに違いがあるのでしょうか?

レベル別の対応策はあるのか?【答えはNO!】

吃音のレベル(1~5)に差があると、吃音者や周囲の人々の対応にも差が生じるかというと、そうではありません。吃音のレベルが1あったとしても、5であったとしても、コミュニケーションの基本に違いは生じません。

吃音者への対応とは?

話し方へのアドバイスをしない

吃音者へのアドバイスをする必要はなく、話の内容に耳を傾け共感をすることが大切です。
NG:「もっとゆっくり話してみたら?」
OK:(話の内容をしっかりと把握し)「○○なんですね」「そうなんですね」

話の先取りは避ける

話しの途中でことばに詰まってしまっても、次のことばは必ず出てきます。話の腰を折らずに、共感しながら、話を最後まで聞くことが大切です。
NG:「あしたの、クァ!かい・・・」⇒「明日の会議は9:00からですよ!」
OK:「あしたの、クァ!かい・・・ 会議の場所が変更になったそうです」

吃音者はどうしたらいい?

吃音に立ち向かうことが正しいとは限らない

吃音がひどくてしんどい時、必ずしも吃音に立ち向かう必要はありません。一度逃げて、話すためのエネルギーを蓄えてからまたスタートするということは、決して逃げではありません。ただ、話すことは楽しい、声を出すことは楽しいという気持ちを忘れないことがキーとなります。歌を歌ったり、YouTubeの朗読を一緒に読んだりと、滑らかに話すことができる体験を積み重ねることで、自信につながります。

信頼できる相手に吃音について伝えておく

信頼できる上司や先輩、同僚に吃音について打ちあけることで、吃音の波がピークに達したときの心の支えとなります。吃音とはなにか伝えるだけでなく、どうしてほしいのか、何をしてほしくないのかを発信することが大切です。

まとめ

吃音には明確なレベルが設けられています。言語聴覚士による詳細な検査を経てレベルの評価がなされます。レベルの位置づけは、重い・軽いを判断をすることではなく、症状の頻度や心の状態(情緒反応)を適切に判断し、適切な指導方針を立てることを目的としています。そして、吃音者が楽に話すことができるためにはどうすれば良いかの判断材料として用います。吃音のお悩みは、言語聴覚士に相談しましょう。

参考文献

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